このページに掲載されている記事は、月刊じょうほう「オアシス」誌の記事を出版後に校正し直したものです。
ワイルドウエストと自然保護の町
ケーブクリーク(8)
2014年12月号
個人主義と自然愛護が共存 |
||||||||
ケーブクリークのマグアイヤー町会議員を訪ねてみた。そのインタビューで語られたケーブクリークが持つユニークな性格をまとめてみよう。 |
||||||||
こうして、ここにはユニークな仕組みが出来上がった。私企業の消防サービス業者が、住民から一ヶ月$1,000ほどの入会費を集める。まるで保険制度のようなものである。ケーブクリークの住民の半数は、これに加入しているが、残りの半数は、入っていないとのこと。
|
||||||||
|
||||||||
マクガイヤー町会議員(自宅にて) |
もう一つの特徴がある。ケーブクリークの住民は、高地の砂漠が大好きである。山々に林立するサワロのサボテン、神出鬼没するコヨーテ、ボブキャットなど様々な動物たち、澄んだ空気。なにもかもが豊富な自然の恵みで、この自然美に惚れた人々が、アメリカ各地からやってきて、ここで生活をしている。とにかく、できるだけ自然のままの姿の中に入って、生活をしようという人たちがほとんである。従って、観光客は歓迎するが、大規模な観光化による自然破壊には、大反対である。グランドキャニオンが観光ブームで、次々と新しい施設やバス運行システムができているのを見て、「グランドキャニオンのディズニーランド化」と揶揄したのもケーブクリークの住民だった。 21世紀もいよいよという、1990年代。スパークロスという広大な砂漠地帯に大規模な土地開発計画が明らかになった。これは、その自然美をこよなく愛していた地元民にとって、寝耳に水の話だった。経済活性という観点から見れば、観光事業は、町にとって税収入となり、プラスのはずである。しかし、住民にとって、それ以上に大きな失ってはならないものがあった。それは、常に変わらぬ「自然美」だった。早速、数人から始まった反対運動は、飛び火をして、多くの住民が支援する運動に発展した。政治家達も動き出し、ついに、土地開発計画は、消滅してしまった。その後、保護区確立への増税案に賛成し、「自然美」を固守したのだった。 ケーブクリークは、今後も大都市化へと変化することもなく、こうした「自然美」と「個人の権利」を執拗に守り続ける人たちによって、実にユニークで、またアメリカらしい地方自治体として、静かにかつ堅固に生存をつづけることであろう。 |
|||||||
|
||||||||
ケーブクリーク町長、ヴィンセント・フランシア氏 |
開口一番、彼は「私は仏教徒なんです」と言う。「長いこと、チベット仏教などに魅せられて、毎朝5時に瞑想をしてから1日を出発するんです」と語り始めた。氏の宗教思想は、政治の分野に明確に反映しているという。 |
|||||||
フランシア町長(町会議ホールにて) |
||||||||
関連記事
|