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このページに掲載されている記事は、月刊じょうほう「オアシス」誌の記事を出版後に校正し直したものです。

ワイルドウエストと自然保護の町、
ケーブクリーク(7)

2014年11月号

 現在、スパークロスは、ケーブクリークの全てを象徴する一大自然保護区域となっている。ここには、ケーブクリークの歴史のすべてが凝縮されており、恐らく何万年も前から同じような大自然を誇ってきた場所に違いない。古代先住民が往来し、白人が金を見つけ、牧場主が馬を走らせ、そして、今日、巨大な近代的土地開発を見事に拒否して、昔ながらの姿を保っている。

 今月は先月に続いて、このスパークロスを歩きながら、ケーブクリークの歴史の一端を見てみよう。

   
スパークロスに土地開発計画

 1990年代に、ある開発業者がスパークロスに目を付けた。この広大な敷地に何百もの住宅、ゴルフコース、そしてリゾートホテルを建設する企画を出した。1996年には、その見取り図が出来上がっていた。これを知ったケーブクリークの住民が、土地開発は砂漠の自然を破壊するものと、反対運動を起こしたのだ。この運動は、政治家たちを巻き込み、ジョン・マッケイン上院議員やジェイン・フル州知事(当時)の支援を得る。

 
スパークロスを守ろう

 こうして、スパークロスの土地開発計画は、姿を消した。その結果として、アリゾナ州、マリコパ郡、ケーブクリーク町の3つの自治団体がスパークロスの敷地を買収し、自然保護区域に指定することになった。買収価格は、1,500万ドル。ところが、買収交渉の最終段階で、土地価格が2,000万ドルに値上がってしまった。
 差額の500万ドルをどう作るか。そこで、ケーブクリーク町議会が苦肉の策を考えた。町議会では、住民に訴えて、町内の固定資産税の増税案を住民投票で可決させようとしたのだ。この増税が可決すれば、600万ドルが捻出できるという計算だった。

   

 住民投票は、2000年9月12日に行われた。ケーブクリークの住民がどう反応するか。自分たちの税金を上げてまで、砂漠の自然保護をしようとするだろうか。
 結果は、選挙権を持つ住民の74%という大多数が投票を行い、その中で78%が増税に賛成したのだ。

 

 

 この住民投票の結果、スパークロスの所有権は、70%をマリコパ郡が、残りの30%をケーブクリーク町が持つこととなった。
 2004年には、マリコパ郡とケーブクリーク町が共同で、保護区のマスタープランを作り上げた。保護区は、全部で2,154エーカー。駐車場、ハイキング用のトレイル、ポータブル・トイレ、休憩場、標識が設置された。保護区内に入るには、一人につき3ドルの入場料が決定された。現在、この入場料による収入が、保護区内の修復業務などに使われている。

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