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このページに掲載されている記事は、月刊じょうほう「オアシス」誌の記事を出版後に校正し直したものです。

生き残ったゴーストタウン、ジェローム(1)

2005年1月号
  

 アリゾナには、多くの「ゴーストタウン」がある。ゴールラッシュ時に鉱山として繁栄した町が、閉山と同時に無人化した。しかし、その中でも見事に蘇った町も少なくない。

 今月はその内の一つ、ジェロームを歩いてみよう。

 
 ジェロームとは?

 ジェロームは、プレスコットの町から約28マイル北に位置する。プレスコットからハイウェイALT89号沿を北上し、狭い山道を登っていると突然、その姿が目に飛び込んでくる。

 この町は、クレオパトラ・ヒルと呼ばれる丘の上に立つかつての銅山だ。 19世紀後半に著しい活況を帯びた町だったが、20世紀半ばの閉山と同時にゴーストタウンへの道を余儀なくされた。しかし、最近では芸術家などがこの地に移住してきて、町は、生き残りを成し遂げた。

 酒、ギャンブル、喧嘩、売春など、かつての喧騒はすっかり鳴りを潜め、今は観光客が次々と足を止め、昔の姿を想像しながら散策している。 

   
 名前の由来

 ジェロームの名前は、この地で銅の採掘作業が始まった頃に、事業投資をした実業家、ユージン・ミュレイ・ジェロームからきている。彼は、ニューヨークを拠点としていたので、ジェロームの地を訪問することは皆無だった。

 面白いのは、 彼がイギリスの首相、ウィンストン・チャーチルと血縁があるとい うことだ。彼の父、アディソン・ガーデナー・ジェロームは、やはりニューヨークの実業家だった。その彼の兄の娘が英国のランドルフ・チャーチルと結婚した。その間に生まれた男子がウィンストン・チャーチルだったのだ。つまり、ジェロームのいとこの息子ということだ。

   
ジェロームの歴史

古代からあった銅の採掘作業 

 この一帯は、シナワ(Sinagua)族と呼ばれる古代先住民が約1000年も前に生活していた。彼らが遺した住居がジェロームの北にあるクラークデールという町で発掘された。その名をツジグート遺跡という。

 このツジグートやその周辺に住居を構えた彼らは、ジェロームで美しい青色や緑色の石を見つけ、装飾品やつぼなどに使った。こうして石の需要が増えると、さらに多くの石を求めて、彼らは地面を掘って地下から見つけようとした。これこそがジェロームの歴史上初の銅の採掘活動となった。考古学者が見つけた洞窟には、木や柱の梯子が遺されており、古代の昔に採掘作業が盛んに行われたことが裏付けられた。  

 

 スペイン人の到着

 

 この地に初めてヨーロッパ人が訪れたのは、16世紀のことだ。スペイン人のアントニオ・デ・エスベホがメキシコから黄金の町を求めてアリゾナを北上した。1582年から83年の間に、アリゾナとニューメキシコを探検した彼は、今のジェロームやクラークデール一帯で過去に銅の採掘作業をした跡があったことを記述している。もちろん黄金を探していたエスベホにとっては、現地の先住民が採掘している「美しい石」などには関心が無かったようだ。銅は金ではないからだ。

白人の到着 

 

 黄金の町が見つからず失望したエスベホがこの地を去って300年後、同じ地をアングロ白人が訪れる。1876年、アパッチ・インディアン偵察隊の隊長、アル・サイバーが一部隊を率いて、現在のジェロームの地に到着した。すでに古代先住民たちはとうの昔に姿を消し、ツジグートは廃墟となっていた。

 ところが、同年 

 
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