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このページに掲載されている記事は、月刊じょうほう「オアシス」誌の記事を出版後に校正し直したものです。

カーチュナー洞窟州立公園

2011年7月号

 地下に2.4マイルもの長い通路トンネルがある洞窟。これがカーチナー洞窟(Kartchner Caverns) だ。長い間人目にさらされることなく、アリゾナの大地の下に潜んでいた。探検家がここを初めて発見したおが1974年だったが、それ以後もしばらくその存在は秘密のままであった。と言うのは、これが単なる洞窟ではなかったからだ。彼らが見たのは、何万年もかかって形成された巨大な鍾乳洞だったのだ。この鍾乳洞をどのように保存したら良いか、それが最大の課題となった。長い経緯があった。そして、今、州政府の公園局の管理のもと、一般の私たちが洞窟の中に足を踏み入れることができるようになった。

 今月は、この巨大なる自然の地下壕、カーチナー洞窟州立公園を訪れよう。

   

 カーチュナー洞窟の天井からつらら状に伸びている細長い鍾乳石をソーダストローと呼び、日本語では、鍾乳管と言う。鍾乳管は大変もろいので、余り長く伸びにくいのだが、カーチュナー洞窟にあるものは、21フィート3インチと世界で最も長いものの一つに挙げられている。
 そして、地面から上に伸びている石柱は、アリゾナで最も高く、58フィートも伸びているものがある。

 

 このような洞窟と鍾乳洞はどのようにしてできるのだろうか。
 まず、一滴の水が全ての始まりだった。3億3000年も前、この一帯は、浅い内陸海だった。そこに沈殿物が少しづつ蓄積されて、石灰岩となる。何百万年もの後、この石灰岩の地層は他の岩の地層とともに隆起し、今のウェトストーン山脈を形成する。そして、山に断層などができると、その石灰岩が断層をつたって下に落ちて行く。
 そして雨が降る。雨水は二酸化炭素を吸収して、酸性となり、地面の割れ目などから下に落ち、石灰岩を濡らしていく。そして、少しづつ石灰を溶かして地面の中に入って行く。地下では、地下水の推移が下がると、そこに空間ができる。
 カーチュナー洞窟の中にある多種多様な鍾乳洞は、20万年をかけて、こうした水が一滴一滴したたり落ち、出来上がったものだ。
地表からしみ込んだ雨水は地中の鉱物を溶解し、そして石灰岩に当たる。それが、いったん洞窟の中に入ると、水中に含まれていた二酸化炭素が発散する。そして水が溶解した鉱石が少しずつ堆積していく。長時間をかけて、こうした鉱石は洞窟の中で素晴らしい色彩を放つようになる。カーチュナー洞窟は、今でも生き続けている。そして鍾乳洞の形成は引き続き行われているのだ。

 

 カーチュナー洞窟州立公園は、公園内にある二つの洞窟を一般に公開している。両方とも予約が必要で、全てグループツアーだ。従って勝手に個人行動をとって歩き回ることはできない。
ツアーを提供している洞窟は、ロツンダ/スローンとビッグ・ルームの二つだ。
 ロツンダ/スローンのツアー:ツアーの距離は、半マイルで1時間半。10月9日までオープンし、10月10日から12月14日の間は閉鎖される。ツアーの料金は、14才以上が$22.95で、7〜13才が$12.95。7才以下は無料。
 ビッグ・ルームのツアー:ツアーの距離は、半マイルで1時間45分。10月14日まで閉鎖。10月15日からオープン。ツアーの料金は、ロツンダ/スローンと同じだが、7才以下の子供は入れないようになっている。
 予約は、オンラインでも電話でもできる。電話は、520-586-2283(毎日午前8時〜午後5時)。

 

 この洞窟をすみかとしている動物がいる。それは、コウモリだ。夏の間は、カーチュナー洞窟の「ビッグ・ルーム」がコウモリのねぐらとなっている。そこには1,000匹ものメスのコウモリが生活をする。妊娠したコウモリは、毎年4月の末ころになると、カーチュナー洞窟に戻ってくる。そして、6月の後半になると子供を生む。子供達は、母親が虫などの食べ物を洞窟の外に取りに行っている間、洞窟内で親を待つ。この夏の期間に、コウモリたちは、大量のガ、アリ、カブトムシ、蚊、シロアリなどを捕獲して食料としている。そして、9月の中旬になると、母親達とその子供達は、冬のすみかを求めて、この地を去っていく。
 さて、面白いのは、その生態系だ。
 コウモリは洞窟内に大量の排泄物の山を残して去っていく。すると、まず、その排泄物に菌類やバクテリアが入り込む。そして、ダニ、シラミ、ワラジムシ目、線虫などがこうした菌類を食べにやってくる。すると、蜘蛛、サソリ、ヤスデ、ムカデなどがこうした虫を食べにやってくる。そして、残物処理をコオロギやカブトムシなどの大きな昆虫が済ませる。従って、コウモリの残していく大量の糞は、このように他の生き物にとって大切なエネルギー源となっているのだ。
 そして、再びコウモリ達がこの洞窟に帰ってくると、全ての残飯処理をした大きな昆虫がコウモリの餌となっていく。まさに見事なる調和の世界だ。

 
行き方(フェニックス、ツーソンから

 高速道路I-10を東に走り、ベンソンに来たら、90号線を南下する。9マイル行くと州立公園の入り口が見えて来る。

 
 
公式サイト
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