このページに掲載されている記事は、月刊じょうほう「オアシス」誌の記事を出版後に校正し直したものです。
伝説の山、スーパースティション・マウンテン
失われたダッチマン州立公園
2003年11月号
ごつごつした黒い岩肌.きりだった絶壁。鋭い刺を持ったサボテン。 ここは、長い間、人間を寄せ付けなかった神秘の山だった。その後、金鉱の話に魅了された人々が、その夢を追って、この山に次々と足跡を残した。 人間の欲と山の神秘が交錯した不思議なる山である。 今月は、フェニックス郊外の東に立つスーパースティション・マウンテンを歩いてみる。 |
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スーパースティション・マウンテンの誕生
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2,900万年前、アリゾナは海の底にあり、平坦な地表だった。その地表に少しづつ割れ目ができ始めた。地下からの圧力が大きくなり、ある日その割れ目から海水が内部に流れ込んだ。流れ込んだ海水は、内部の熱で蒸気となり、膨れ上がった。そうして、海底から次々と地割れが始まった。こうして大地殻変動は起こった。地上からマグマが吹き上がってきた。 地上から噴出した溶岩は、外気によって冷え、硬くなって岩山となる。これが、スーパースティション・マウンテンだ。この山の奇妙な形をした岩の塔は、その時にできたものが長い時間をかけて風と雨水による風化作用で形成されたのだ。 この山の標高は6,000フィート(1,829メートル)。冬は時々雪景色となる。 |
名前の由来1 |
スーパースティションとは迷信とか言い伝えという意味だ。では、何故、この山が「迷信の山」と呼ばれようになったのだろうか。それには、二つの説がある。 まず、一つ目。1860年代に白人の開拓民がフォート・マクドウェル(現在のファウンテンヒルズ近く)で農業を営んでいた。彼らは、軍隊に食料や馬の干し草を提供していた。ある時、彼らは地元のピマ族から変な話を聞いた。それは、ピマ族の人々がスーパースティション・マウンテンをいつも恐れているということだった。白人は、ピマ族があまりにも迷信的だと思い、それでこの山を「迷信の山」と呼ぶことにした。 |
名前の由来2
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16世紀に7つの黄金の都市を信じてスペイン人がやって来た。アリゾナには、フランシスコ・ヴァスケス・デ・コロナドがこの一帯を探検した。金を探し求めていた彼は、先住民から雷神が持つ宝の話を聞き、心を躍らせたのだ。早速、先住民に道案内を求めた。 すると、彼らは、勝手に山を歩く者は、雷神から罰を受けると言って道案内を断ったのだ。そこで、そんな話を笑い飛ばしたコロナドは、道案内なしで探検を始めた。 ところが、次々と奇妙なことが起こり始めたのだ。コロナドの探検隊の一人が崖から転がり落ちた。また、ある者は骨折して歩けなくなってしまった。そして、ある者は、急に行方不明になって姿を消した。 すると、コロナドの探検隊員の間に恐怖が走った。その上に、天空に不気味な雷雲が急遽、現れたのだ。すでに不安でいっぱいの彼らは、怖気付いた。そこへ、今まで経験したことがないほど強烈な雨が嵐のように降り始めた。 命からがらで山を逃げ出してきた探検隊員は、もはやこの世とも思えないほどの恐怖のどん底に陥っていた。そして、コロナドは、この山を「モンテ・スペルスチオネス」と命名したのだ。それが英語になって「スーパースティション・マウンテン」となった。つまり「迷信の山」である。 |
この山に引っ越したメキシコ人 |
スペイン人はこの地を去り、「迷信の山」は静けさを取り戻した。そして、300年も空白の時期が続いた。 19世紀になると、メキシコのソノラ州で牧場を持っていたドン・ミグエル・ペラルタがこの地にやって来た。彼は気まぐれで欲が深く身勝手な男だった。彼の元には数百人の人が奴隷のようにして働いていた。 さて、彼にはロシタ・マリアという名の娘がいた。美人だが苦労知らずでお転婆娘。その彼女にカルロスという若い男性が近づいた。 ある夜、ロシタ・マリアが大声でわめき散らして、父親のもとへ走って来た。なんと彼女は真っ裸だ。カルロスからひどい目に会ったという話に、ドン・ミグエルは、激怒した。牧場の男たちは、一斉にライフルを手にカルロスを追う。逃げたカルロスは、スーパースティション・マウンテンに姿を消した。 インディアンの道案内なしでは、山道を動くことができないと知ったドン・ミグエルは、ウルフ・ノーズ(狼の鼻)という名のインディアンとその手下を雇った。そして、ウルフ・ノーズは、山に入ってカルロスを追ったのだ。 ところが、そのウルフ・ノーズが中々帰って来ない。イライラして待っていたドン・ミグエルに、ようやく何日も後にウルフ・ノーズがたった一人で戻って来た。手ぶらで帰って来たウルフ・ノーズに・ドン・ミグエルは、厳しく問い詰めた。 |
金塊の話
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ウルフ・ノーズは、ドン・ミグエルの詰問にうろたえることなく、ニコヤカに自分の手のひらをドン・ミグエルに見せたのだ。何と、その手のひらには、クルミ大の金の塊が光っていた。この金を見た途端、ドン・ミグエルは、今までの怒りを忘れて、ウルフ・ノーズに話の詳細を尋ねた。 話はこうだ。何日もカルロスを探して歩いていたある日、ウルフ・ノーズは、カルロスが馬に乗って近づいて来るのを見た。彼は、早速、銃を持ってカルロスの前に出た。すると、カルロスは、「撃つな。見てくれ。こんなに金があるんだ。向こうにもっとあるよ」と叫んだ。 ウルフ・ノーズは、カルロスの話を聞いた。カルロスは、この山で金鉱を見つけたと言う。そして、この金をドン・ミグエルの所に持って行って、娘のことを謝罪し、娘と結婚したいと話すのだった。 そこで、ウルフ・ノーズは、カルロスの後を付いて行くと、その金鉱に到着した。そこには、金が山のように会った。早速、鞍の袋に金を押し詰め、ドン・ミグエルの牧場に向かった。 山を降り始めると、川にぶつかった。この川は普段乾燥しているのに、この日は急流の水が走っていた。数日待てば水の流れが緩やかになるのだが、待てないカルロスは、その急流を渡り始めた。ウルフ・ノーズとその手下たちも、仕方なくカルロスの後を追って川に入った。ところが、水の流れは思ったより激しく、カルロスはその水に飲まれて馬と一緒に姿を消してしまったのだ。そして、ウルフ・ノーズの手下たちも同じ運命となった。かろうじて生き残ったのは、ウルフ・ノーズだけだった。彼は、自分の手にしっかりと握っていた金塊を持って、牧場に戻って来た。 |
ウソか誠か、迷信の山の話
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ドン・ミグエルは、3人の彼の息子たちと一緒に徹底的に金鉱を探して山の中を歩き回った。そして、ついに高純度の金鉱を見つけた。その上、他にも数カ所の金鉱を発見できた。彼は、金鉱に印を付け、後でわかるようにして牧場に戻った。 1853年にガズデン購入で、アリゾナはメキシコ領からアメリカ領になった。その直前、ドン・ミグエルは、アリゾナがメキシコ領である間に、もう一度あの金鉱に戻って、金を大量に取って持ち帰ろうと決めた。そして3人の息子たちを牧場に残し、400人の男たちを連れて、この山に入った。 ところが、アパッチ族がメキシコ人の来訪に怒り、ドン・ミグエルの一隊を襲撃したのだ。アパッチ族は、ドン・ミグエルを含む全ての男たちを皆殺しにしてしまった。そして、金鉱も全て徹底的に破壊し、その形跡すら残らないようになったのだ。 この虐殺のニュースは、またたく間にアリゾナ中に知れ渡った。そして、強欲の男たちの話は、スーパースティション・マウンテンの象徴として語られるようになった。 |
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