このページに掲載されている記事は、月刊じょうほう「オアシス」誌の記事を出版後に校正し直したものです。
アリゾナの天文台(1)
2002年2月号
アリゾナには世界に誇る天文台がある。乾燥した空気、澄んだ空。夜の星空を観測するには、最適な環境だ。 |
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なぜアリゾナか |
古代から先住民が空を見つめ、大宇宙との調和を思索してきたであろうアリゾナ。時代が変わっても、宇宙を求める心は変わらない。 このアリゾナに近代技術を極めて宇宙の謎を解明しようと、天文台が建設されてきた。乾燥した空気、澄んだ空、そして標高が高い山々など、天文観測には好条件が揃っているのがアリゾナだ。 アリゾナの天文台は、フラッグスタッフの高山、ツーソン郊外の高山、そしてアリゾナ東部に町サファードの高山に建設された。その中で世界的に有名はものは、フラッグスタッフのローウェル天文台とツーソン西のイットピーク天文台だ。 |
ローウェル天文台 |
ローウェル天文台は、その名の通り、ローウェルという天文学者が創立したものだ。彼は、1894年にこのアリゾナ初の天文台を作り上げた。写真観測や分光観測による火星の研究、また冥王星の発見で有名で、数多くの業績を残している。 |
24インチ・クラーク望遠鏡 |
天文台の創立二年後に、ローウェルは、24インチ・クラーク望遠鏡を購入した。このクラーク望遠鏡は、長い間、ローウエル天文台の主流望遠鏡として活躍した。ローウェル自身、何時間もこの望遠鏡で火星を観測し、火星の図が何枚も出来上がった。彼は、火星がもっとよく見える場所をと、このクラーク望遠鏡をメキシコに運んで観測したこともあった。この望遠鏡は、現在も教育用に使われており、歴史的価値があるものとなっている。 |
バーシヴァル・ローウェル |
ローウェルは、ボストンの上流階級の家に生まれ、1876年にハーバード大学を卒業。数学に極めて優れていた。彼は、火星に生物が存在する可能性を何としても証明したかった。そして、燃える情熱を天文学に注いだ。その結果として、フラッグスタッフに天文台を作ることになった。彼は、私財を全て投じたのだ。彼がフラッグスタッフを選んだのは、この地が標高といい、鮮明な空といい、最適な場所だと判断したからだ。当時のフラッグスタッフの住民たちは、ローウェルと天文台を暖かく歓迎した。 |
赤い星 |
彼は、15年間、ただ火星の観測に一切を費やした。彼が描いた「赤い星」の表面図には、無数の直線が交差していた。彼は、明るい表面が砂漠で、暗い表面には植物が繁殖していると推測していた。さらに、水は氷が溶けて運河に流れてきていると信じた。 そして、ローウェルは自分が亡くなるまでの最後の8年間をX星の発見に情熱を傾けた。それは、当時はまだ発見されていなかった太陽系の9番目の惑星の探求だった。この探求は、ローウェルが1916年にこの世を去った後も、同天文台の他の天文学者に受け継がれ、ついに、1930年に冥王星の発見へと結実することになった。 |
新たな惑星発見へ |
太陽系8番目の惑星である海王星が見つかったのが1846年だった。この海王星の質量を調べていくにつれ、海王星より外側にもう一つの惑星が存在するのではないかと考えられるようになった。 ローウェルも長い間、その未知の星を探していた。そして、最終的に冥王星がローウェル天文台で発見されることになる。この新惑星は、「ブルート」と命名された。「プルート」とは、ギリシャ神話に出てくる地下世界の王のことだ。この冥王星の発見は、北米での唯一の惑星発見となった。 |
冥王星 |
冥王星は、直径が2,274キロメートルと小さな惑星で、地球の質量の0.2パーセントである。また、月よりも小さい。自転は6,387日、公転は、約248日。つまり、もし冥王星に私たちが住むと仮定すると、そこでの1日は、地球の6千日以上という気が遠くなるほどの長時間で、248年待たないと正月が来ないことになる。 冥王星と太陽との距離は、何と59億キロメートルもある。冥王星は、太陽を長い楕円形を描いて公転しいる。 冥王星の発見後、冥王星にも小さな衛星があることがわかった。この衛星はカロンと名付けられた。カロンとは、やはりギリシャ神話でプルートが支配する地下の世界を流れるメイドの川の渡し守のことだ。カロンの直径は、1,172キロメートル。地球と月のように、互いに同じ面を向けて回っている。 |
その後の論争 |
さて、太陽系9番目の惑星となった冥王星だが、その後、さらに観測が続けられると、冥王星の惑星としての地位に疑問を抱く学者の声が高まっていった。これは、望遠鏡や観測技術の向上に伴って、冥王星の質量がより明確になってきたことから、冥王星の質量が非常に小さいことと、その表面を覆う氷が彗星が持つ氷と同じ成分であることなどから、冥王星を惑星から外すべきだという説が強まってきた。その結果、2006年に冥王星は惑星から外され、準惑星の一覧に加えられた。 |
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宇宙の膨張 |
ローウェル天文台は、冥王星の発見だけでなく、近代天文学に大きな影響を及ぼす研究成果を残してきた。その一つは、宇宙が膨張しているという証拠を出したことだ。この観測結論は、後日、「ハッブルの法則」という重要な宇宙法則の発見にもつながった。この法則は、「遠いものほど速い速度で遠ざかっていく」ということで、宇宙の果ての遠い空間が超高速でぐんぐん遠ざかっているという意味だ。 |
今後のローウェル天文台 |
冥王星の発見、カイパーベルトという小天体の発見、天王星のリンク発見などローウェル天文台は、貴重な研究成果を出してきた。そして、今でも、日夜さらなる努力が注がれている。これからも、アリゾナ発信で素晴らしい宇宙への夢を私たちにもたらしくれるだろう。 |
スティール・ビジター・センター |
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