サワロの育ての親
アリゾナの風景画や写真などに頻繁に登場してくる巨大なサボテンは、サワロという名で呼ばれています。英語でsaguaroというスペリングですが、gを発音しません。人間が両腕を上げているような形の枝が特徴ですが、皆さんが見るサワロのほとんどは、皆さんが生まれる前からその場に立っているのです。成長が遅く、長生きする巨大サボテンは、150年から200年の寿命があります。

このサボテンの花は、アリゾナの州花になっています。毎年5月から6月に幹の頂上や枝の先に白い美しい花を咲かせ、花が散ると、残った果実を食べに鳥がやってきます。
僕は、時々、ロサンゼルスに車で行きますが、インターステート10号の高速道路を走ります。ロサンゼルスからアリゾナのフェニックスに向かう途中で、州境を通ります。カリフォルニア州とアリゾナ州の州境は、コロラド川で、この川を通過すると、「ようこそアリゾナへ」という看板が出てきます。そして、アリゾナ州に入るとすぐ、サワロが見えてくるのです。まさに、サワロはアリゾナのシンボルです。

さて、サワロのことを調べていたら、面白い事実を見つけ、驚きました。サワロには、育ての親の役を果たす植物があるのです。もちろん、全部のサワロに該当することはないと思いますが、多くのサワロは、小さい苗のような時に、ある木に守られて育つのです。自然の調和というか、宇宙の法則というか、誠にそのシステムに感動したことを覚えています。
サワロの花が咲くと、その周りにミツバチなどが蜜を求めてやってきます。こうして受粉が行われ、花が散ると果実が残ります。この果実を食べに、鳥がやってきます。

さて、アリゾナによく繁殖しているパロバーデという木があります。砂漠のあちこちで見ることができます、この木は、アリゾナの州木に指定されています。
さて、サワロの果実を食べた鳥が、パロバーデの木に止まります。この木は、枝と葉が多く、鳥にとっては格好の休息の場です。その木に止まった鳥は、フンを落とします。そのフンの中に、消化されなかったサワロの種が入っています。

サワロの種は、パロバーデの木の下に落とされると、やがて芽を出します。パロバーデの木のお陰で、強烈な直射日光を避け、十分な日陰と湿気を保ち、若芽が成長し始めます。若いサワロは、こうして、木に守られて、スクスクと育つのです。パロバーデが落とす葉は、サワロの養分となり、水分は、パロバーデの根から吸収します。
そして、いよいよ大きなサワロに成長すると、パロバーデの木を押し退けて、やがて巨大なサボテンとして、王者の風格を現します。一方、パロバーデは、サワロを育てる役を終え、倒れて死んでいき、やがて砂漠の地の戻っていきます。
こうした役目をする植物は、「ナース・プラント」と呼ばれ、まさに献身的な乳母の植物なのです。このように、アリゾナの砂漠は、何千、何万年と、夥しい数の植物、動物、鳥類、昆虫などがお互い共存しあって、その調和の美を作ってきたのです。