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このページに掲載されている記事は、月刊じょうほう「オアシス」誌の記事を出版後に校正し直したものです。

アリゾナ州のアジア系人口増加

2021年7月号

 アリゾナ最大の日刊紙、アリゾナ・リパブリック紙は、5月16日の記事で、アリゾナ州で最も急速に人口を伸ばしている人種は、アジア系であると報道した。
全米では、アジア系がその数を伸ばし、アメリカ社会に根を確実に張っていることが2020年の国勢調査でより明確になった。そして、アリゾナもその例外ではなかった。アリゾナでは、かつてそれほど目立たなかったアジア人が、街角でよく見かけるようになっている。
 昨今全米で問題となっているアジア系住民への嫌がらせや暴力事件の顕在化をよそに、静かに台頭を続けるアジア系アメリカ人。今月は、全米とアリゾナ州のデータを通して、このアジア系住民の動向をで見てみよう。

 

メサ市で行われたアジア系住民への暴力行為と人種差別に対する抗議集会
アリゾナにおいて急増するインド系住民。ディカバー・インディア・フェスティバルの希望も拡大している。
アリゾナで活発な活動を展開するアリゾナ・アジアン商工会議所
 
   
全米のアジア系人口

 

 

 

 

 

 図表1では、アメリカにおける1870年から現在までのアジア系人口と、今後2060年までの増加予測を示している。これは、ピュー研究センターがまとめた資料だ。

図表1

 

 また、図表2では、外国からアメリカへの移民を人種別に示している。顕著なのは、1960年代、1970年代で、移民の半数を超えるほど圧倒的多数が白人であった。ところが、それ以降、白人移民は、急激な減少傾向となっている。これは、冷戦下で共産政権を嫌ってヨーロッパからアメリカに渡ってきた白人や、仕事や教育の可能性などを求めて、白人がアメリカ大陸に渡った。そして、1980年代以降は、ヨーロッパからの白人移民に代わって、中南米からのラティノ系移民が主流となった。

図表2


 ピュー研究センターが計算した将来の移民動向は、アジア系の着実な増加により、2065年までには、アジア系移民がその他の人種を上回って、全米トップの座を占めるという予測を立てている。

   
アリゾナのアジア系人口

 図表3は、やはり、ピュー研究センターが作った資料だが、現在アメリカに在住するアジア系移民の出身国を示している。これによると、全米では、中国系がもっとも多く、他のアジア系移民の先頭に立っている。

図表3


 ところが、アリゾナに関しては、違う現実が見えてきた(図表4)。
アリゾナ州へのアジア系移民は、ハイテク関連の仕事や教育、安い生活コストなどがアリゾナへの移住を決定する鍵となったいるが、国別では、そのトップはもはや中国ではなく、インドが移民数の先端を走る国となった。これは、10年前の国勢調査でも明らかになったが、トップのインドに続き、フィリピンが2位となり、中国は3位にとなっている。ともあれ、インド、フィリピンそして中国の3国がアジア系のマジョリティーを占めていると言える。
 図表5は、アジア系人口でも他民族との混血を含めた人たちの合計である。

図表4
図表5

 

   
市別
図表6

 

 市別では、アジア系の人口がもっとも多い市は、やはり1番の大都市であるフェニックスだ。それに続いてチャンドラー市がアジア系を多く抱える市となっている。
 また、アジア系人口を全体のパーセンテージ見ると、図表6のように、チャンドラー、テンピ、ギルバートといった、いわゆるイーストバリーと呼ばれる地域に高い割合の人口が見られる。これは、アリゾナ州立大学やインテル社をはじめとするIT大手の企業に就学、就職しているアジア系住民が多いことがパーセンテージを上げている要因と見られる。