このページに掲載されている記事は、月刊じょうほう「オアシス」誌の記事を出版後に校正し直したものです。
ケーブクリーク・キャニオンを走る
2021年2月号
アメリカの旅行作家、ウィリアム・リースト・ヒートムーン (William Least Heat-Moon)が書いたBlue Highways(日本語版のタイトルは、ブルーハイウェイ:アメリカ漂流)で、「私が今まで見たことがない、最も奇妙な形の地形の一つ」と描写したこの地。それが、ケーブクリーク・キャニオンである。彼は、アメリカを車で横断し、広大なアメリカ大陸各地の話を小説に盛り込んだ。 |
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チリカワ山脈の「奇妙な形」とは
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リースト・ヒートムーンが描写した「奇妙な」格好をした岩の数々。それは、数えきれないほどの岩の柱が寄り添って、その頂点には、今にも転げ落ちそうな岩石がチョンと乗っかっている、という形だ。まさに大きな力を持った誰かが、いたずらで岩を置いたのではないかと思えるほどだ。そこに自然の畏敬を感じた先住民は、この地を聖なる地として大切にした。 |
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チリカワ (Chiricahua)は、現在のメキシコ北部からアリゾナ南部一帯に住んでいた先住民、オパタ族の言葉で、彼らがこの山を「チリ・カウィ」と呼んだことからきているようだ。「チリ・カウィ」とは、七面鳥のことだ。と言うのも、かつて、この山々にはかなりの数の野生の七面鳥が生息していた。残念ながらその七面鳥は、人間の乱獲で死滅してしまった。そこで、1980年代にメキシコから野生の七面鳥が南アリゾナ一帯に持ち込まれ、再び繁殖している。なお、そのオパタ族も今では、メキシコ人の中に同化して先住民族として存在していないし、その言語も死滅してしまっている。
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ケーブクリーク・キャニオンの名前の由来は? |
さて、次に「ケーブクリーク」の名前を見てみよう。ケーブとは「洞窟」で、クリークとは「小川」の意味。その名の通り、確かに小さな小川が流れている盆地で、穴が開いた岩山が各所に見られる。この穴は、その昔の大火山による地殻変動が生み出したものだ。現在、考古学者が洞窟の調査をしているが、かつての先住民がこうした洞窟で生活をしていた形跡が見つかっている。ここの洞窟は、長い間、人間だけでなく、多くの様々な動物たちの隠れ場所だったり、休息の場となってきたに違いない。 |
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チリカワ国立記念物 (Chiricahua National Monument)
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ケーブクリーク・キャニオンを通過し、車でそのまま山道を走り続ける。この道は、42 フォレスト・ロードという名で、途中から未舗装の道となる。山をどんどんと登っていき、頂上に着くと、今度は下りの道となる。そして、下り終わってそのまま走り続ける。途中、シカや鳥などが現れ、大自然に育まれた生命の呼吸を感じる。 |
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公式サイト |