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このページに掲載されている記事は、月刊じょうほう「オアシス」誌の記事を出版後に校正し直したものです。

ペイソンの夏、憩いのグリーンバリー公園

2020年8月号

 グリーンバリー公園は、1996年に完成し、「ペイソンの宝石」とも呼ばれている市民の憩いの場所だ。13エーカーの敷地に大きな人工の池を囲み込むように設計されている。園内にはリム・カントリー博物館、公共トイレ、駐車場が設置され、散歩用歩道が池の周囲に備えられている。
 標高5,000フィートのペイソンは、夏の避暑地としてフェニックスなどから観光客が訪れる。
 今月は、この公園を歩いてみよう。

 
 
グリーン・バリー・レイク

 レイクと名前が付いているが、大きさとしては、大型の池が一つと中規模な池が二つある。このレイクは、ペイソンの地下水の再利用を目的に建設され、水資源の安定供給を可能にしている。アリゾナ州の魚類野生生物局が進める都市内釣りプログラムとペイソン町の公園局が共同で作りあげたものである。

リム・カントリー博物館

 

 この博物館には、ペイソンの町とその周辺の歴史を伝える様々な資料が展示されている。博物館に近づくとまず、目に飛び込んでくるが、館前に立つ消防士の銅像である。これは、ドュード・ファイヤーと呼ばれる 1990年6月26日に発生した大規模な山火事の際、懸命に消火作業に当たった消防士を讃えるものだ。この山火事が起きた日は、フェニックスで記録的な最高気温122℉(50℃)に達し、ペイソンも106℉(41℃)の高温だった。当時極めて乾燥していたトント国立森林だったが、そこに、激しい雷雨と共に雷が落ち、火災が始まった。火の手は広大な森林地帯を次々と焼き尽くしていった。この山火事の消火作業に61名の消防士が駆けつけ、6名が作業中に死亡している。消失面積は、28,000エーカー。
 また、この山火事でゼイン・グレイという作家の山小屋が焼失されてしまった。現在、その山小屋の複製が博物館前に建っている。
(博物館は、現在、新型コロナウイルスの影響で一時閉鎖となっている。)

  公式サイト
ゼイン・グレイ(Zane Grey)

ゼイン・グレイの山小屋の複製

 ゼイン・グレイは、1872年にオハイオ州に生まれた。幼い頃から読書が好きだった彼だが、野球にも長け、野球の奨学金でペンシルベニア大学に入学し、歯科学を専攻した。卒業後、歯科医としてニューヨークで開業した。
 その後、アメリカ西部や釣りを題材とした小説を書き始め、ついに専業作家となった。1912年に彼が書いた西部劇小説「ライダーズ・オブ・ザ・パープル・セイジ(Riders of the Purple Sage) は、米国でベストセラーとなる。その後、彼の作品に基づいた多くの映画が誕生し、グレイは、作家として大成功を遂げる。彼は、アリゾナも訪れ、西部での探検を小説に反映させた。
 1923年から1930年の間、彼は、ペイソンの近くの山に山小屋を建て、一年の間、数週間、生活をしている。グレイは、1939年にカリフォルニアで死去した。彼の山小屋は、その後オーナーが変わりながら、森の中に残っていたが、1990年のドュード・ファイヤーの山火事で、火の粉を被り灰と化してしまった。

最近の山火事

 この一帯は、森林に囲まれ、大変自然に恵まれている。しかし、雨量が少ないアリゾナでは、とりわけ夏の山火事が大きな心配の種である。
1990年に起きたドュード・ファイヤーもそうだが、今年の6月に発生したブッシュ・ファイヤは、トント国立森林、約20万エーカーの広大な森林を焼き払った。この山火事は、自動車の発火が原因で、火事は、瞬く間に広がってしまった。
 ちなみに、ブッシュ・ファイヤーは、アリゾナの歴史の中で五番目に大きな山火事となっている。

ブッシュ・ファイヤーで焼け野原と化した山々