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このページに掲載されている記事は、月刊じょうほう「オアシス」誌の記事を出版後に校正し直したものです。

大きくなるアリゾナ

2017年7月号

 2008年に世界を襲った経済不況。この時、住宅市場に最大の被害を受けたのがアリゾナ州だった。そのどん底から這い上がり、大きな回復が見られる昨今となった。町のあちこちにビルや住宅の建設工事が見られ、その槌音が聞こえてくるようになった。アリゾナの人口は、確実に増えている。

 今月は、この回復のアリゾナ、そしてさらに大きくなるアリゾナに目を向け、データなどを紹介する。

 

全米第5番目の都市となったフェニックス

 本年5月の最も新しい国勢調査局の調べでは、これまで全米で6番目の人口を抱えていたフェニックス市が、5番目であったフィラデルフィア市を抜いて、ついに全米5番目の大都市になったという事実が明らかとなった。
アメリカの大都市であるニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴなど良く知られた市の中で、最近の人口増加のトップを走っているのがフェニックスであることも分かった。
 例えば、2015年7月から2016年7月の一年間で、ロサンゼルス市は、27,173人増加している。同時期にサンフランシスコ市は、24,473人の増加。ニューヨーク市は、21,171人の増加というデータが出ている。そして、フェニックスは、その同時期に32,113人の増加を示した。
 一方、全米の大都市で唯一、人口減少している市がある。それは、シカゴだ。2015年から2016年の一年で、8,638人減少。その一年前が4,934人減っている。人口減少の要因は、気候と犯罪が挙げられる。厳しい冬を嫌い、より温暖な場所に移動する人たち。そして、近年の著しい犯罪の増加で、とりわけ、より安全な場所を求めてシカゴを離れる黒人の数が顕著になっている。それでは、こうした人たちがどこに引っ越しているかというと、テキサス州、フロリダ州、そしてアリゾナ州の3州が引っ越し先のトップとなっている。

 

 

フェニックスを含むマリコパ郡

 フェニックス市とその周辺の各都市を含む、いわばメトロ・フェニックスは、マリコパ郡に入っている。このマリコパ郡は、全米のすべての郡の中で、最も人口増加が著しい郡である。2015年から2016年の間に、1日平均222人増加してきている。

   
バッカイ市、驚異的な人口増加

 2015年7月から2016年7月の一年間で全米トップの人口増加を示している町がある。それは、フェニックスの西側に位置する「バッカイ(Buckeye)」という町だ。ここには、無数の新興住宅が急速に広がり、次々と他州から人々が引っ越してきている。。
 この町の驚異的な人口爆発は、2000年代に入ってから始まった。2000年にたった6,500人余だった人口が、次の10年間で5万人を超え、約8倍の急成長を遂げたのだ。
 この背景には、もちろん、他州からアリゾナへの人口移動が大きな要因となっていることは確かだが、なぜ、バッカイなのだろうか。
バッカイは、主に農場と砂漠が広がっている場所だが、その農場や砂漠が次々と新興住宅街に変化していった。広大な敷地を利用して、そこに念入りに計画されたコミュニティーを建築することに成功している。
もっとも良い成功例は、インターステート10号と最近その一部が完成したループ303号が交差する一区域に生まれたヴェラド(Verrado)というコミュニティーだ。これは、2004年にオープンとなったマスター・プランの街で、8,800エーカーの広大な敷地に14,000軒の家屋を建設するという巨大計画コミュニティーだ。今では、全米で住宅販売ベストセラーを誇る新興住宅街となっている。車道に並木を植え、アリゾナ砂漠を忘れさせるようなハイセンスな雰囲気を作り、敷地内にマーケットサイドと呼ばれる区域を作り、生活に必要な商店、レストラン、病院、学校、公共施設などが近距離に位置するようにした。
 今まで、生活必需品を手に入れたり、レストランで食事を楽しむために遠距離運転を必要とするような新興住宅街が多かった。ヴェラドは、全く新しいデベロッパー思想で、住民がその場所で全てをまかなえるようなコミュニティー作りを目指した。バッカイ市では、次の30年から40年先の成長を見越し、フェニックス近郊で最もユニークな都市に成長していくことを主眼に置いて建設計画を練っている。