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このページに掲載されている記事は、月刊じょうほう「オアシス」誌の記事を出版後に校正し直したものです。

フェニックス空港に登場する
スカイ・トレイン

2012年7月号

 グリーン、グリーンと叫ばれる昨今。環境保全への市民の意識が向上する中、公共交通機関も「グリーン」である必要性が強調されてきた。フェニックス市では、ライトレイルがすっかり定着してきているが、近い将来、新たな電車がスカイハーバー国際空港にお目見えする。フェニックス・スカイ・トレイン(PHX Sky Train)という名称で、現存のライトレイルの駅(44th St. & Washinton St.)と空港を結んで往復する。

 今月は、このスカイ・トレインの工事現場に足を運んでみた。

現在工事中のレール

   

どんな電車?

 スカイ・トレインの電車は、カナダのケベック州モントリオールに本社も持つボンバルディア社の製品だ。面白いのは従来の電車のイメージと異なり、車輪に使うタイヤはゴム製。その上、運転手を必要としない無人電車である。運転操作は、空港のすぐ北にあるボンバルディアのコントロールセンターから無線で行われる。なお、この無線は航空機のパイロットが使用する無線との混線が一切ないように設定される。
 収容能力は、1台につき56名の乗客を運搬し、1回の運転に3台の車両がつながって走るので、最高160名を運ぶことができる。走行距離が極めて短いので、車両の中では多くの乗客は立ったままの状態が可能だが、車両の中には、高齢者や身体障害者用にイス席が設けられている。

Photo provided by Sky Harbor International Airport
 
   
運行

 ステージ1(第一段階)は、メトロのライトレイル駅から東エコノミー駐車場を経由し、ターミナル4に入る。この段階は2013年に完成予定。次にステージ1aと呼ばれる段階が始まり、ターミナル4からターミナル3を結ぶ様になる。この完成は2015年の予定だ。そしてステージ2(第二段階)は、線路がレンタカーのセンターまで延長される。この完成は2020年とのこと。運行は1日24時間行われ、ピーク時は3分おきに走るようになる。

Photo provided by Sky Harbor International Airport

Photo provided by Sky Harbor International Airport

 
資金はどこから?

 ステージ1は、総工費6億4,400万ドル。通常の公共事業は、その資金は自治体の税収入から賄われることが多いが、スカイ・トレインは異なる。まず、オバマ政権が打ち出した経済刺激政策が反映される。当事業は、公共事業奨励のひとつとして連邦政府から承認され、資金が援助されている。
 その上、空港が利用客に課す乗客施設料金による収入は、スカイ・トレインにとって基調な運転資金ともなる。この料金は、航空券一枚に付き最高$4.50課せられているもので、空港にとって欠かせない収入源となっている。そしてこの料金収入は法律で空港内の運用資金としてのみ使用できるという仕組みになっている。従って、利用客が増えれば増える程、この種の収入が増加することになる。
 また、空港内のその他一切の収入もばかにならない。駐車料金、航空機着陸料金、売店やレストランからの収入など、空港は、資金調達の恰好な場所となっている。

   
何がグリーンか?

 電車の色はブルーと黒だが、空港側ではこの電車を最も環境保全に適したグリーンの技術を使用していると誇っている。とりわけ強調されている点は、一般の自家用車が空港に乗り入れる数を減少させることだ。現在スカイハーバー国際空港は、年間4千万人以上の乗降客が出入りしている。その数は今後さらに増加していくのは明白である。この大量の利用客の大半が自家用車を使うと、その排気ガスは膨大で深刻な問題である。


 ガソリンの大量消費と大気汚染にまみれた社会への見直しがフェニックス空港でも始まった。

 ともあれ、車社会のアメリカが車社会から脱皮する道を少しづつ歩もうとしている。今後もこの傾向は強まり、長い年月をかけた環境と人間の共生をさぐる旅路のようだ。