HOME

カテゴリー別

このページに掲載されている記事は、月刊じょうほう「オアシス」誌の記事を出版後に校正し直したものです。

フェニックス市長に聞く

2012年5月号

 グレッグ・スタントン氏がフェニックスの市長に就任して4カ月。市政に新風をと、市長室に入った彼にその展望を聞いてみた。
 現在41才の氏は、2009年2月にアリゾナ州の法務局に引っ張られて官吏の任務に就くまで、9年間、フェニックス市会議員として活躍した。その間、市の姉妹都市委員会の一員として姫路市を2回訪問している。
 前市長フィル・ゴードン氏の任期満了にともなう市長選挙で民主党から出馬し、昨年末の決選投票で勝利した。今月は、フェニックス市長が語る市の未来像を紹介する。

 

ダウンタウンとフェニックス市庁舎

 

今日は日本人の読者の皆様に市長をご紹介したいと思います。市長はフェニックス出身ですか?

 生れはニューヨークですが、3才の時に一家でフェニックスに引っ越してきました。

 

 

それでは、フェニックスの大きな変化をずーっと見てきた訳ですね。

 その通りです。

市長の目から見たフェニックスの魅力は何ですか。

 

 

 

 

 ソノラ砂漠の美ですね。大変多くの人たちがこの地に引っ越してきてその美に魅了されています。他の州では決して見ることができない自然がここにはあります。そのため、ここでのライフスタイルは誠にアクティブになります。ハイキングやらサイクリングやら自然と一体になって楽しめるからです。
 その上、私は人間が好きです。そんな私にはアリゾナの人々の多様性が魅力的です。ここには、素晴らしいネイティブ・アメリカンの歴史が息づいています。そして、もちろん大きなヒスパニック系のコミュニティーがあります。その上、急速に人口が増加しているアジア系の人たちの社会もあります。こうした多様性が私が愛するフェニックスにあるのです。

 

 

それでは、フェニックスの課題はどういう所にありますか。

 

 

 

 

 

 

 全てが地球規模で動いている世界にあって、フェニックスの人々も地球市民として生きていく必要があります。しかし、フェニックスが他の世界的な都市と同レベルで対抗できるかというと、まだそこまで行っていません。そこで一番大事なことは、教育だと思います。世界に通用する可能性を秘めた若者がこの地にとどまって、実力を充分に発揮できる場所にならなければなりません。また、世界の他の都市からも有能な人材がフェニックスに来て、社会に貢献できるようになることが必要です。そのためにも学校、図書館、公園、文化施設などに投資をして確実に充実させていかなければなりません。それだけでなく、経済的にもより多くの魅力ある職場が用意されることが必要です。
 私は、フェニックスがその方向に進んでいくと確信しています。しかし、こうした理想が天から降ってくるようなことはないのです。一層の努力が必要です。

 

 

近年のメディアの報道などで、他の州から見たアリゾナのイメージが悪化しているように思えます。「アリゾナ、あるいはフェニックスは怖い所」とか「移民に対し敵意に満ちている」とかいう声を聞きます。一方、2月のアリゾナ・マツリなどで、あれほど多くのアリゾナの人々が日本文化に興味を示していることに、驚嘆の声を寄せてきた他州の方々が多数いらっしゃいました。市長は、どのように、このようなネガティブなイメージを転換して、本来の素晴らしいフェニックスを作っていこうと考えていますか。

 

 

 

 近年、アリゾナ州が経験してきたことは、誠に狭い近視眼的な政治戦略です。このことは、州全体の経済活動にも大きなマイナスの影響を与え、さらに世界にネガティブなイメージを与えてしまいました。
 私がいつも訴えてきたことは、民衆の側に立つことと、多様性を敬うことです。誰だって分断された社会など住みたくないものです。私はこの変革に携わる一人であろうと思います。
フェニックスに住む多くの人たちは、そんな差別観を持ったり分断した社会を好んだりするような人たちではありません。一部の政治家達が本来あるべき姿を忘れているんです。それが、過去数年起きてきたことです。歴史的にも、たとえば、第二次世界大戦の時に、アメリカ在住の日本人や日系人を収容所に送り込むべきだと、政治家達が言い始めたのです。本来あるべき姿を忘れると、あのような悲惨な出来事を人々が経験しなければならなくなるのです。
 私は、楽観主義者です。これからは、必ずより良い方向に進むであろうし、またそうしていかなければなりません。

 

 

1月に市長就任式で、市長はフェニックスがより魅力的な市となるよう、文化活動などの支援に力を入れることを表明しました。アメリカの東海岸から来た人たちに言わせると、アリゾナは文化に乏しいという不満を聞きます。フェニックスの市長として、美術や音楽など多様性に富んだ文化促進をどのようにしていこうと考えていますか。

市長就任式(1月3日)

 まず、アリゾナは文化に乏しいという方に言ってあげたい。もう少しよく見て下さい。アリゾナには、素晴らし文化が根付いています。ここは東海岸とは違います。フェニックスはニューヨークではありません。しかし、ハード博物館などアメリカ先住民による素晴らしい文化を学ぶ機会があります。ここには、バレーやシンフォニーなど私たちが誇りとする文化活動も積極的に展開されています。ダウンタウンで行われているファースト・フライデーに行ってごらんなさい。驚くべき若手芸術家達が競ってその腕を見せています。
 こうしたことを基礎に、フェニックス市は、文化投資に力を入れていきます。今年はその分野に予算を取りましたから、一層の向上が図られていきます。私自身、文化活動や各種イベントに顔を出して、支援をしていきます。ここにはニューヨークとは違うユニークな文化の花が咲いていくはずです。

 

 

市長は、市会議員であられた時に姫路市に2回行かれたことがあります。その時の日本の印象を聞かせて下さい。

 

 

 

 

 

 

 

フェニックス日本親善公園

 そうですね。幸運にも姫路市を2回訪問することができ、素晴らしい経験をさせていただきました。もちろん姫路城の美は言葉では表現出来ないほど感動的でした。それだけではなく、多くの日本の指導的立場の人たちとも交流でき、また、フェニックスの日本人社会の人たちとも知り合うことができました。日本の文化の美とともに、人々との交流に感謝しています。
その上、この姉妹都市交流のお陰で、フェニックスに住む若者が姫路市の学校で学び、かけがえのない体験を積むことができています。こうした若者は、現在国際社会の中で活躍しています。そうした意味で大変大切な姉妹都市交流だと確信しています。
 また、その結果として、フェニックス日本親善公園が誕生しました。これは、フェニックス市の中で「最も隠された宝」の一つであると思っています。これもひとえに姫路市から与えられた暖かい友情の産物であります。
 今後、私は、日本をはじめとして多くのアジア系の方々と交流し、市が設置している「太平洋岸顧問委員会」を通してより一層の活動をしていきます。こうしたことに成功していかないと、結果的にフェニックスという町が他の都市より遅れをとっていってしまうという悲劇を招くからです。

アリゾナ・マツリ

 

市長在任期間に再び日本を訪問する予定はありますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 是非行きたいですね。文化交流という面でも大切ですが、経済的なインパクトも考えていかなればなりません。フェニックスには、SUMCOなど日本企業が営業しています。また、ライトレイルも近畿車両社の電車を使っています。こうした意味でフェニックスと日本の企業との関係を大切にしていきたいですし、そのためにも、いつか日本を再訪問したいと考えています。

ライトレイル

日本人の読者に何かメッセージはありますか。

 

 

 もし、皆さんがフェニックス住民でしたら、意見、質問、提案など何でも遠慮なく市長室に言ってきて下さい。こちらは、即座に対応します。今までも多くの方々からメールを受け取っています。市長室にきたメールは、すぐ対応するようにしていますから、どうぞ遠慮なく発言して下さい。皆さんの声を聞きながら、市政に反映させていく決意です。より多くの人が関与することで、より良い政治ができあがるはずです。