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このページに掲載されている記事は、月刊じょうほう「オアシス」誌の記事を出版後に校正し直したものです。

ゆっくり楽しめるクランド・キャニオン・ノース・リム

2009年8月号

 グランド・キャニオンと言えば、最も一般に知られている場所は、サウス・リム。つまり、南側だ。そこは、世界中から訪れて来る観光客で毎日混雑を極めている。ところが、キャニオンの北側にもその魅力を満喫できる場所がある。それが、ノース・リムだ。
 ノース・リムの魅力は、何と言ってもその自然美だ。サウス・リムのような観光開発がすすんでいない分だけ、大自然の素顔にゆっくりと接することができる。

   
ノース・リム

 観光客の数は、サウス・リムの10分の1。冬は雪で道路が閉鎖されてしまうし、ビジター・センターは、10月中旬から5月中旬まで営業停止をしている。こうした不便さが、ノース・リムの自然をそのまま残すことに大きく貢献してきている。
 ノース・リムは、カイバブ・プラトーと呼ばれる高原にある。広大な森林にシカ、コヨーテ、マウンテンライオン、バイソン、リスなど動物が数多く生息しており、かなり身近にこうした動物を見る機会に恵まれている。

 
歴史

 グランド・キャニオンを初めて訪れたヨーロッパ人は、スペイン人のガルシア・ロペス・デ・カルデナスの一隊だった。金を探していた彼らは1540年ににサウス・リムに到着した。しかし、ここに金がないことがわかった彼らは、さっさとこの地を去り、それ以後、しばらくヨーロッパ人から忘れ去られていた。
 ノース・リムにヨーロッパ人が初めて着いたのは、それより236年もあとの、1776年のことだ。修道士エスカンテがノース・リムの地を踏んだ記録が残っている。しかし、その後もこの遠隔の地は、一目にさらされることなく、サウス・リムのような開発からは全く縁の遠い場所であった。また、ここは、アリゾナとユタの州境にあり、アリゾナが正式に州になるまで、どこの州の管轄になるのか明確でなかったことも、開発が遅れた原因となった。
 1912年、アリゾナが州となると、グランド・キャニオンはアリゾナ州の中に入ることが正式に決まる。しかし、ノース・リムを訪れる人は少なく、一部のモルモン教の教徒が散在して住居を構えたり、牧場を営む為にここに移り住んでくる者などがいるような程度であった。また、この地はシカなどの狩猟に人気があり、ハンター達がよくやってきていた。テディー・ルーズベルト大統領も、ノース・リムを頻繁に訪れ狩猟を楽しんだようだ。その彼は、1919年に米議会に働きかけ、グランド・キャニオンを保護する必要性を強調し、国立公園の設定に向かった。

 
グランド・キャニオン・ロッジ

 ノース・リムに着くとすぐ目に入って来る大きなビルがグランド・キャニオン・ロッジだ。このロッジのロビーから見るキャニオンは絶景である。1928年、建築家のギルバート・アンダーウッドが自然保護のシンボルとして作り上げた。残念ながら、1932年に火事で消滅し、1937年に再び再建築されて今の姿になっている。このロッジの中には、当時のアンダーウッドの天才的な建築や、かつてのノース・リムの姿などが展示されている。

 
ハイキング

 ハイキング・トレイルは、よく整備されているので、歩きながらキャニオンの壮大な自然を満喫できるようになっている。一番簡単に行ける所は、ブライト・エンジェル・ポイントで、グランド・キャニオン・ロッジから少し下りていった所に、キャニオンを一望できる所がある。

 
ドライブ

 道路もよく整備されている。グランド・キャニオン国立公園の中で最も標高の高い場所が、ポイント・インペリアルだ。8803フィート(2684メートル)の高地にグランド・キャニオンとその正反対の山々を一望できる。