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このページに掲載されている記事は、月刊じょうほう「オアシス」誌の記事を出版後に校正し直したものです。

コロッサル洞窟、大鍾乳洞の魅惑

2008年1月号

 アリゾナにある巨大鍾乳洞。長い時間を経て自然の力が作り上げた美の極めか。今月はこの鍾乳洞、コロッサル洞窟を探検してみよう。

洞窟近くにある牧場、ラ・ポスタ・ケマダ・ランチ
ツアーのコース

 コロッサル洞窟内のツアーは、約半マイル、時間にして1時間以内で見て回ることができる。毎日ツアーガイドが付き添ってくれて、説明してくれる。まず、洞窟内のコースを下り、そして上り始める。通路には、手すりが付いているので安全に歩くことができる。最も高い所では約6階建てのビルまで登る感覚だ。眼前には様々な形の岩が見えて来る。鍾乳洞の上からつらら状になった鍾乳石、鍾乳洞のそこから上に向かってできている石筍(せきじゅん)などが次々と現れてくる。
 グループ・ツアーは毎日約30分毎に出ている。切符を買った後は、自分のグループの番がくるまで待てば良い。洞窟の中はいつも華氏70度で乾燥している。冬でもジャケットなど不要だ。

 
鍾乳洞の生成

 鍾乳洞は石灰洞と呼ばれる。石灰岩地帯に降った雨や地下水が石灰岩に当たる。その水が長い時間をかけて浸食し、石灰岩に空洞ができる。この地下にできた空洞の中に地上から水が流れ込む。そして水路ができ、石灰成分が溶け込んだ水が、洞窟の天井や壁に染み出る。そしてその水が空気に触れると、その時に結晶化して、いろんな形の構造が発展し始める。
 天井からは、石灰成分の説けた水が少しずつ落ち、つららのような形を形成する。天井から下に落ちた水が洞窟の底で結晶すると、次第に盛り上がった形の石灰岩が出来上がる。

   
コロッサル洞窟の水

 最近の研究では、コロッサル洞窟には2つの異なった水源があったと見られている。一つは、1000万から1500万年前のもので、地下水が洞窟の通路を形成した。この水は温度が高く硫酸をかなり含んだものだった。ある時期に水温が下がると、そのまま洞窟内に侵入することがなくなった。
 もう一つは、地上から侵入してきた水だ。これが、鍾乳石や石筍などを作り上げた。この水は、たぶん数十万年前から侵入を始めたと考えられている。そして、地殻変動で近くに山ができる時、この洞窟の周辺の土地が沈没する。そして、洞窟自体がそのまま残ったので、もともと地下にあった洞窟が、現在は丘の中腹に位置するようになった。
 今日、洞窟は地下水面の上にある。そして、土砂と植物がその回りを覆っており、湿度が一定に保たれる結果となっている。また、多くの大小の穴があり、この穴が洞窟の換気の役割を果たしている。従って、洞窟内はいつも一定の温度と湿度が保たれている。地質学者によると、この洞窟は過去2千年から1万年の間、内部が乾燥状態のままだったようだ。

地下水面の上にある洞窟だが、将来、地下水の水量が減ると、洞窟の底が崩れることになる。

 

 
強盗とコロッサル洞窟

 この洞窟は、犯罪人が隠れるには中々格好の場所だった。1884年4人の男が汽車を襲った。場所は、ツーソンの東にある小さな町、パンタノ、またコロッサル洞窟の丁度南にあたるところだった。彼等はゴールドや現金を、当時の金額で$72.000奪って逃げた。そして、リンコン山脈に入り込んだ。保安官、レザーウッドは、彼等を追い、ある穴に入っていくのを確認した。この穴が、コロッサル洞窟の入り口だった。保安官が穴の中に顔を入れると、中から銃が撃たれた。中は真っ暗で何も見えないし危険なので、保安官は、この無法者達が洞窟の中から出てくるのを待った。どうせ中には食物があるわけではないし、いつか、腹が減って出てくるはずだと判断した。
 こうして保安官は穴の入り口で、二週間待った。すると、副保安官が馬を走らせ、彼のもとに来て、思いもかけない報告を持ってきた。何と、この4人組の連中は、ウィルコックスの酒場で酔っぱらってどんちゃん騒ぎをしている、と言うではないか。ウィルコックスと言えば、この洞窟から70マイルも離れた町である。彼等はその酒場で、金をまき散らしながら、どうやってあの洞窟から逃げ出してきたか、自慢話していると言う。
 早速、犯人追跡隊がウィルコックスに向かった。そして、銃撃戦となり、4人のうち3人が射殺。残った一人は逮捕され、28年の刑務所行きを宣告された。その後、コロッサル洞窟には捜査団が入り込んだ。キャンプファイヤの跡や衣類は見つかったが、肝心の$72.000が見つからない。少々酒で使ったとしても、あの大金はまだどこかにあるはずだ。
 逮捕された男の名前は、フィル・カーバーという。28年の刑務所生活を送った後、釈放になり、ツーソンに居を構えた。保安官、レザーウッドは、28年後もまだ保安官だった。そして、執拗にカーバーの跡を追った。案の定、カーバーはコロッサル洞窟に向かっていた。そこで、保安官は追跡隊を洞窟内に入れ、追跡させた。ところが、当のカーバーは姿を消して見つからない。追跡隊が見つけたものは、彼が捨てていったと思われる空の袋だった。一体、大金はどこに。
 その後もこのような列車強盗は後を絶たず、その度に、コロッサル洞窟は犯人の隠れ場となり、また、盗難品の隠し場ともなってきた。洞窟のどこかに大金が眠っていると信じている人もいれば、ただの話として聞き流している人もいる。
こうして、この洞窟も人間の欲と夢が混じり合った西部劇風の舞台となってきたようだ。

公式サイト  
 

コロッサル洞窟マウンテン公園は、現在、オルテガ・ナショナル公園という私企業が所有/管理をしている。