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このページに掲載されている記事は、月刊じょうほう「オアシス」誌の記事を出版後に校正し直したものです。

アリゾナの水

2005年5月号

 砂漠のアリゾナ。毎日のように晴天が続き、年間日照日は300日を越えるこの地。サボテンのように水を体に蓄えて生きることができない私たちには、水の確保が死活問題となる。

 人間が増えれば、それだけ水の需要が増加するのは当然のことだ。アリゾナは、はたしてこの需要に応えるだけの水を供給できるだろうか。

 今月は、アリゾナの水について考えてみよう。

 

ソルト・リバー上流
 

セントラル・アリゾナ・プロジェクト
   
アリゾナの水はどこか

アリゾナの水は基本的に4つの供給源から確保されている。
1. 地上水
2. コロラド川
3. 地下水
4. 再利用水

   
地上水

 湖、河川から確保される水のこと。アリゾナの砂漠気候では、一定の水量を確保することがむずかしい。ソルト・リバー、バーデ・リバー、ヒラ・リバー、アグアフリア・リバーが主な河川だ。

   
コロラド川
セントラル・アリゾナ・プロジェクト (CAP)

 20 世紀初頭よりコロラド川の水の利権をめぐって、アリゾナ、カリフォルニア、ネバダ、ニューメキシコ、ワイオミング、コロラド、ユタの7州が交渉。1944 年にアリゾナ州はコロラド川の水を州内に引いて使うことが承認される。1946 年にセントラル・アリゾナ・プロジェクト協会が設立され、コロラド川からアリゾナ州内への用水路の建設を連邦政府から許可を得べく、ロビー活動。1968 年にジョンソン大統領が承認の署名をして、CAP の建設が開始される。レーク・ハバスからツーソン
南部までのCAP 建設が可能となり、全州の水の確保に大きな貢献をしている。
 CAP には2つの水源がある。一つはもちろんコロラド川。もう一つはレーク・プレザント。レーク・プレザントはコロラド川とアグア・フリア川から流れ込む水でできている人口湖。水の需要が低い冬にはレーク・プレザントではただ水を保留し、夏場になって水の需要が上がると、この湖から水を供給する。

   
地下水

 アリゾナの4 割以上の水は地下から。地下水は地下の帯水層と呼ばれる地層に雨水が入り込んで出来たプールのようなもの。まさに大自然が作った水の貯蔵所だ。百万年以上もの長い間静かに保存されてきた地下水。それを吸い上げる人間。そこで誰かが管理する必要が出てきた。1980年に地下水管理法が生まれ、過剰に地下水を吸い上
げることがないよう、州政府が厳しくチェックするようになった。

   
再利用水

 近年、州内でより活用されるようになってきた方法。
 人口増加にともない下水の再利用によって農業用地、ゴルフコース、公園、工業用冷却水などに使われている。

   
フェニックス

ソルト・リバーと用水路

 5世紀ころからフェニックス一帯に定住していたホホカム・インディアンは、この地を流れるソルト・リバーの水を使って生活をした。彼等が石器を使って作り上げた用水路の数々は総計で850 マイルにも及ぶほど大規模なものとなっていた。
 ホホカム族が去って400 年後にフェニックスに来た白人は、その用水路を再利用することで定住を可能としたのだ。しかし、このソルト・リバーは時に氾濫を
起こして多大な被害を生む。一定の水量を確保して農業を営むためには、川の上流にダムを築く以外に良案はなかった。1889 年にダムの予定地を探して一群の男達が馬に乗って、アリゾナ東部の山を登った。そこで彼等が見つけたダムの最良の地。これが現在のルーズベルト・ダムがある場所だ。1902 年に米議会を通過したアメリカ開墾法によって、ソルト・リバー・バリー水利用者協会が創設された。これが現在のソルト・リバー・プロジェクト (SRP) の前身。
 その後、ソルト・リバーには数カ所のダムが建設され、バーデ・リバーにもダムが加えられて、水の確保と水力発電による電力の確保を可能とした。

   
ツーソン

 

ここに住んだホホカム族は、サンタクルズ・リバーから農地に水を引いて生活を営んだ。17 世紀に活躍した宣教師キノは、サンタクルズ・リバーに十分な水があると書き残している。
 ツーソンの人口が増えるに従って、水不足を克服するために地下水を吸い上げる事業が次々と行われた。市の人口増加を食い止めるか、水源をさらに求めるか、という厳しい選択を迫られながら、市側は1970 年代に水道料金を急騰。1980 年には節水措置を徹底的に推進し、州内で最も節約に成功した町となる。
 CAP がツーソンで完成したのは1990 年。

   
今後の課題

1. 近年の干ばつ
 過去数年続いている干ばつ警報。毎年夏になると乾燥しきった森で山火事が発生し、時には手が付けられなくなるほど大規模な火事となり、甚大な被害が生じている。また、地球の温暖化現象による気象の変化も大きな危惧となっている。降雨量が少なくなれば、必然的に水の供給に限界が生じる。ロッキー山脈の降雪量が下降すれば、コロラド川の水量に大きな影響を及ぼす事になるのだ。
2. アリゾナの人口急増
 人口が増える。つまり水の需要が増えるという事だ。とりわけアリゾナの人口は今後も増加の一途をたどることが予想されている。これに賢く対応し、水を賢く使う工夫がどうしても必要となる。

 

人口急増のアリゾナ、、、果たして水の確保は、、、