世界一の朝焼けと夕焼け

 アリゾナの朝焼けと夕焼けは世界一だ、と僕は思っています。先の投稿記事で、僕が夕焼けを見て、アリゾナにずっといようと決めたことを書きましたが、本当です。その魅惑は、言葉では言い表せないほど、感動を誘うのです。もちろん、毎日そのような赤い空が見えるかというと、そうではありませんが、少なくとも、日本にいた時より、はるかに数多くの素晴らしい夕焼けを見てきました。朝に強い人は、朝焼けも断然おすすめです。

 なぜ、赤くなるかというと、太陽が地平線に近くなると、光が斜めに差してくるので、太陽光線に含まれている青い光は、空に散らばってしまい、人間の目では見えなくなり、赤い光がそのまま、地球に届く、ということらしいです。

 でも、アリゾナは、どうして格別に色鮮やかな赤い色を出すのでしょうか。

 まず大きな要因は、乾燥した空気です。湿気があると、どうしても色が散らばってしまいます。

 次に挙げられる要因は、大きな空です。広大なアリゾナに広がる空は、それを遮る高山やビルが少なく、太陽光線が空いっぱいに放たれていきます。太陽が昇ったり、沈んだりする時、空の色がどんどんと変化し、その変化が、広大な空間に現れます。

 もう一つの要因は、砂漠の小さな砂塵です。乾燥していますから、砂塵は風で空に舞い上がります。アリゾナの空には、吹き飛ばされた細かな粒子状の砂塵が舞っています。こうした砂塵に太陽光線が当たり、空いっぱいに鮮やかな色彩を見せていきます。特にアリゾナのモンスーンの季節には、強風に噴き上げられた砂塵の数々は、大空に広がり、太陽の光を受けて、芸術作品を作り上げるのです。

 その上に、より感動的なのは、地面に広がる赤土や赤っぽい色を含む岩石です。空が赤くなり、太陽光線が地面を照らす時、地面の赤色が輝くのです。まるで、大空とそこに浮かぶ雲、太陽、赤土が共同作業で、一流芸術品を見せつけてくれているように思います。その時間は、時には、5分余りであったり、15分ほどであったりしますが、短時間の大自然の映像に魅せられ、心がホッとします。

 僕が写真を習っている時、プロの先生が僕に言った言葉を忘れません。「写真を上達したければ、朝焼けと夕焼けを撮り続けよ」と。

驚異の進化、サボテン

 僕がアリゾナに来て、いつも深い関心を持つのは、多種多様な形をしたサボテンです。アリゾナの砂漠は、ソノラ砂漠といって、独特な植物がたくさん繁殖しています。ジリジリと照りつける太陽光線、カラカラに乾いた空気、高温が長く続く夏の日々、突然襲ってくるモンスーンの嵐など。この厳しい環境に生き残るために、生物は、独特の形を作り上げて、繁殖してきました。

 特に、サボテンは、丸いものから、細長いもの、横に広がるものから、縦に伸びるものなど、その種類は300ほどあるようです。

 また、サボテンが咲かす花の色鮮やかなことは、驚くばかりです。

 このサボテンですが、自然の厳しい環境から少しずつ進化してきて、今の形になったのです。

 ここアリゾナは、かつて、熱帯原生林だったのです。「ジュラシックパーク」という映画で有名になった「ジュラシック」は、本当に昔の時代、「ジュラ紀」を意味します。ジュラ紀は、約2億年前の時代で、「ジュラシックパーク」の映画に登場した恐竜が地球を制覇していた頃です。

 アリゾナもその頃、恐竜たちがのし歩いていて、熱帯原生林だったのです。今のアリゾナからは信じられないことですが、実際、アリゾナのある広大な砂漠に、多くの恐竜の骨やその当時の大木の化石が見つかり、国定公園に指定されている場所もあります。

 こうした普通の木々や植物も、環境の変遷に対応して、進化をし続けてきました。

 サボテンがその良い例です。

 植物の葉は、太陽光線を受けて光合成をしていますが、強烈な太陽の光が照りつける砂漠では、葉の面積がどんどん縮まり、棘になったんです。

 僕は、写真撮影のために、砂漠を歩いていて、棘が手や足に刺さった経験が何回もあります。とても痛いです。そんな時のために、消毒薬とバンドエイドを欠かさず、持って歩きました。また、靴に刺さってしまった時は、自分の手で引っ張ることができないので、いつも、ペンチをバックパックに入れて、いざという時に使いました。

 面白いのは、また、大変危険なのは、ジャンピング・チョヤと呼ばれるサボテンです。ジャンピングという名前ですが、実際、ジャンプする訳ではありません。でも、極めて鋭い長く伸びた棘がいくつも出ていて、近くを歩いている動物(人間も含めて)が、少しでも接触すると、そのサボテンの一部が簡単に本体から離れ、動物の体に着いちゃうのです。しかも、この棘がしっかりと動物の肌の中に入り、簡単には離れません。

 僕も、一度、この恐怖の一瞬を体験しました。厄介な棘は、やはり、ペンチから何かを使わないと取れません。

 では、なぜ、このような形になったのでしょう。これは、自然の知恵というか、生存への力というか、素晴らしい進化の結果です。

 どんな植物も、子孫を残し、繁殖を続ける必要があります。ジャンピング・チョヤは、動物の体に着くと、動物が動くままに、遠くに行くことができます。そして、ある時、動物の毛皮から離れると、その場で、根を張って、さらに伸びていくのです。痛い目を見る動物には、かわいそうですが、厚い毛皮に覆われていれば、大丈夫でしょう。ただ、人間は、そういう訳にはいきません。十分気を付ける必要があります。

 このような、サボテンに大変魅力を感じ、いろんな写真を撮ってきましたが、何と言っても魅了する美は、サボテンの花です。

 長い進化の中で、花は、まるでサボテンの勝利を宣言しているように、神々しく感じます。どんなに環境が厳しくても、こんなに美しい花を咲かせるのだと、自慢しているようなサボテンを見て、たくましく生きる力が伝わってきます。

 近年は、地球温暖化が進み、サボテンも生死を左右するような状況に立たされていると、新聞などで報道されています。アリゾナの象徴であるサボテンに、さらにたくましく生きてもらいたいと願います。

サワロの育ての親

 アリゾナの風景画や写真などに頻繁に登場してくる巨大なサボテンは、サワロという名で呼ばれています。英語でsaguaroというスペリングですが、gを発音しません。人間が両腕を上げているような形の枝が特徴ですが、皆さんが見るサワロのほとんどは、皆さんが生まれる前からその場に立っているのです。成長が遅く、長生きする巨大サボテンは、150年から200年の寿命があります。

 このサボテンの花は、アリゾナの州花になっています。毎年5月から6月に幹の頂上や枝の先に白い美しい花を咲かせ、花が散ると、残った果実を食べに鳥がやってきます。

 僕は、時々、ロサンゼルスに車で行きますが、インターステート10号の高速道路を走ります。ロサンゼルスからアリゾナのフェニックスに向かう途中で、州境を通ります。カリフォルニア州とアリゾナ州の州境は、コロラド川で、この川を通過すると、「ようこそアリゾナへ」という看板が出てきます。そして、アリゾナ州に入るとすぐ、サワロが見えてくるのです。まさに、サワロはアリゾナのシンボルです。

 さて、サワロのことを調べていたら、面白い事実を見つけ、驚きました。サワロには、育ての親の役を果たす植物があるのです。もちろん、全部のサワロに該当することはないと思いますが、多くのサワロは、小さい苗のような時に、ある木に守られて育つのです。自然の調和というか、宇宙の法則というか、誠にそのシステムに感動したことを覚えています。

 サワロの花が咲くと、その周りにミツバチなどが蜜を求めてやってきます。こうして受粉が行われ、花が散ると果実が残ります。この果実を食べに、鳥がやってきます。

 さて、アリゾナによく繁殖しているパロバーデという木があります。砂漠のあちこちで見ることができます、この木は、アリゾナの州木に指定されています。

 さて、サワロの果実を食べた鳥が、パロバーデの木に止まります。この木は、枝と葉が多く、鳥にとっては格好の休息の場です。その木に止まった鳥は、フンを落とします。そのフンの中に、消化されなかったサワロの種が入っています。

 サワロの種は、パロバーデの木の下に落とされると、やがて芽を出します。パロバーデの木のお陰で、強烈な直射日光を避け、十分な日陰と湿気を保ち、若芽が成長し始めます。若いサワロは、こうして、木に守られて、スクスクと育つのです。パロバーデが落とす葉は、サワロの養分となり、水分は、パロバーデの根から吸収します。

 そして、いよいよ大きなサワロに成長すると、パロバーデの木を押し退けて、やがて巨大なサボテンとして、王者の風格を現します。一方、パロバーデは、サワロを育てる役を終え、倒れて死んでいき、やがて砂漠の地の戻っていきます。

 こうした役目をする植物は、「ナース・プラント」と呼ばれ、まさに献身的な乳母の植物なのです。このように、アリゾナの砂漠は、何千、何万年と、夥しい数の植物、動物、鳥類、昆虫などがお互い共存しあって、その調和の美を作ってきたのです。