2)どこかでお会いしましたっけ?
テンピ市のアパートに入ってから、近くのコンビニ店を見つけ歩いていた時です。向こうから体ががっちりしたフットボールでもやっているような大柄な黒人の男性が歩いてきました。僕は、日本からきたばかりでアメリカ人の顔見知は全く皆無でした。

この写真は、僕ではありません。
この男の人が、私とすれ違う直前に「グッドモーニング。ハウ・アー・ユー?(おはよう。元気?)」と言うのです。僕は、突然のことで、まさか彼が僕に話しかけたと思わず、僕の近くにだれかいるのかと後ろを見たほどです。でも、僕しかいないので、この人は僕に話かけたんだと、わかりました。
ひょっとしたら、どこかで会っているかもしれないのだろうか?誰なんだろう?
そんな思いのまま、とりあえずニコッとすると、彼は、僕とすれ違って向こうに行ってしまいました。それから、同じようなことが、何回もあるんです。大学に行くと、たくさんの学生が歩いていて、時々、同じようなことに遭遇します。
鈍感な僕でも、ようやく、「そうか、顔見知でなくても、こんな風に言うんだな」と理解しました。
それで、僕も同じようにしてみようと思い、全く会ったことがない学生に「ハウ・アー・ユー」と言うと、「グッド」とか言って、反応してくれます。
しばらくして、わかったんですが、アメリカは「自己主張の国」「自己表現の国」です。恥ずかしがっていて、何も言わないと、自分の存在すら認めてもらえません。そう言えば、大学のキャパスでも、普通の街角でも、よく人が話しています。時には激しい口論もしています。自己の表現をしないとダメなんです。僕は、中々、英語が上達しないで、自分の言いたいこともよく表現できなかったんですが、一生懸命言おうとすると、僕のような英語でも、一生懸命聞いてくれる人がたくさんいました。
ここでは、「沈黙は金」のルールは全く通用しないんです。
さて、後に結婚して、長男が生まれました。長男が幼稚園の時に、「明日、何か自分の好きなものを持って行かないといけない」と言いだしました。何をするんだ、と聞くと、「ショー・アンド・トーク」だというんです。「ショー」つまり、見せて、「トーク」、話すんです。これは、子供の時から、自分が好きな物をクラスの全員の前で見せて、これは何なのか、なぜ好きなのか、どうやって使うのか、などなど、詳しく説明をする訓練です。これを見て、「なるほど」と僕は感心しました。自己表現をすることで、相手に理解してもらい、自分も社会の中で自信をつけていくのです。周りの人たちと同じではなく、自分だけのユニークなものを表現し、主張していく国なのです。
世界のどこでも男性より女性の方がよく話しますが、この国の男性はよく喋る。あまり喋り続けるので、僕は聞いているのが嫌になるほどです。でも結構、理路整然と主張する人が多く、さすがに小さい頃から訓練されているな、と思います。僕も、日本にいた頃より、ズーっとよく喋るようになりました。そうしないと、相手にわかってもらえません。