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このページに掲載されている記事は、月刊じょうほう「オアシス」誌の記事を出版後に校正し直したものです。

壁画が物語る古代人の知恵

2009年6月号

 アリゾナの中央部に流れるバーデ・リバー。この川が作った巨大な盆地をバーデ・バリーと呼ぶ。このバーデ・バリー一帯には、かつてこの地に生活をしていた古代先住民、シンワ族が遺した遺跡の数々が発見されている。そして、ヴィー・バー・ヴィー(V-Bar-V)と呼ばれる壁画が完璧に保存されている場所がある。 今月は、この壁画のあるヴィー・バー・ヴィー・ヘリテージ・サイト(V-Bar-V Heritage Site)を訪問してみよう。

バーデ・バリー最大の壁画

 アリゾナには、各所に古代先住民が岩に描き残した絵や模様が発見されている。このヴィー・バー・ヴィーは、その中でも最大級の大きさである。約1000もの絵が大きな岩肌に描かれており、考古学者は長い時間を費やしてその意味の解明に努めて来た。
 これまでの研究でわかっていることは、この壁画は西暦1150年から1350年の間に描かれたものであること。そして、その後シナワ族は突然この地から姿を消していること。この場所は、その周辺に住んでいた彼らの宗教行事に使われきたこと。太陽の光が岩に当たる角度から自然のカレンダーとして使っていたこと、などだ。

 
壁画保護のいきさつ

 この地はすぐ近くにビーバー・クリークと呼ばれる川が流れており、水が豊富だ。1900年位は白人が移住してきてここに牧場を作った。今でもその建物の一部が残っている。しかし、考古学者がこの壁画の存在を確認するのは、1945年まで待つことになる。1994年には、森林局がこの敷地を買い取り、壁画を一般公開したきた。現在は、ボランティアが訪問客の応対をしている。

   
自然のカレンダー

 ここで農業を営んでいたシナワ族の人たちは、作物によって最も適した時期を見極めなければならなかった。その手段として、太陽の角度を観察して、時期を判断した。壁画がある岩の上部に二つの小さな岩が突出している。太陽の光がこの二つの岩に当たると、岩の間を抜ける光線だけが大きな岩肌に当たることになる。時間によると午後の1時から2時ころの間になるが、その光線の角度によって、作物を育てる時期を判断していたという。まさに彼らの生活の知恵だ。一見の価値あり。

 
 

開園:毎週金、土、日、月曜日。午前9:30~午後3時。入園は駐車料(1台につき5ドル)。